インタビュー企画   

【インタビュー】谷川博昭さん:ビジネス視点で見る俳優のお仕事と業界について

大手企業の営業職の最下位から一気に数億売り上げる営業マンへと成長し、今は俳優や配信者として活動されている谷川さん。なぜ俳優に転身しようと思ったのか。そして、営業マンとして活躍されていた谷口さんから、演劇業界・俳優業界がどのように見えているのか伺います。(2019年3月取材)


左:遠藤隆之介さん、右:谷川博昭さん


<目次>


【第1回】俳優とマネタイズ。

【第2回】俳優として配信をしてみて思うこと。

【第3回】コミュ障だった時代の話とフリーランスについて。

【第4回】俳優にこだわらない。


<第1回>俳優とマネタイズ。

遠藤 よろしくお願いします。

谷川 よろしくお願いします。


遠藤 この前(取材時点)まで地下劇場で朗読劇をしてきたっていう。

谷川 そうなんですよ。客演をしてきたんですよ。


遠藤 これが舞台としては何回目くらいですか?

谷川 舞台としては3回目になるんですかね。


遠藤 追い追いビジネスマンの話も聞いていくんですけど、ビジネスマンから見た小劇場の問題点って、3回やってみて感じたことはなんですかね。

谷川 一番の問題点はバイト人が多すぎるって話ですね。



遠藤 これ、前に対談した加藤望さんにも通じるところありますけど。

谷川 お芝居やっててごはん食べていけてる人もいるんですけど、でも例えば芸歴20何年とかになって初めてってところがあったり、この前会った方とかは、あらかた5年圏内の芸歴の人たちだったんですけど、収入が月2万とか3万とか、3ヵ月バイトして1ヵ月お芝居してみたいな感じでした。


遠藤 定期的なバイトじゃなくて、不定期に入れてるみたいな。

谷川 そうです。その状況を3~5年続けてらっしゃる人が多くて。まぁそれでもいいと思うんですけど、お金がない状態って、自分も収入がない状態を経験してるんでわかるんですけど、どうしてもクリエイティブなことができないというか、攻めたことがあんまりできない気がしてるんですよね。


遠藤 収入どころか支出になってるパターンもありますからね。

谷川 そうなんですよ。その中でも20~30人呼んで来いっていう風に、自分で営業するわけじゃないですか。その営業の時間もかかるわけで、使うべき時間を間違ってるなって強く感じますね。


遠藤 谷川さんから見ると、なんてマネタイズできない業界なんだって、って思ったりしますか。

谷川 そうですね。5~10年(芝居を)やってる人とかでも「前回の公演何人くらい呼んだんですか」って聞くと、20人とか30人呼べたら多い方みたいな話をしていて。やっぱり自営業じゃないですか、俳優とかほぼほぼ。って考える中で、集客数が20人とか30人しかできないような商売ってたぶん事業として成り立たないというか、パイが少なすぎるって思っていて。


遠藤 ミュージシャンの人たちって別に毎日本番があるから、ある程度集客力があって、お店で歌わせてもらえば生計立ってる人ってある程度いると思うんですよ。その中で2ヵ月稽古して、1回本番期間があるっていうのは他の業種に比べて効率は悪いですよね。

谷川 めちゃめちゃ悪いですよね。なので、なにか営業手法というか、ビジネスとしての構造を理解してない人が多いのかなってイメージはめちゃめちゃありますね。


遠藤 そこになんかビジネス業界のノウハウを持って、福音をもたらすことはできるんですか?

谷川 正直たぶんできなくはないと思っていて、やっぱりバイトしてやるっていうのが、業界の常であると思うんですよ。ただ、お金がカツカツの状態っていうのは、分散してモノを考えるってことができないと思うんですね。知り合いの役者さんとも話してたんですけど、バイト辞めないんですか?って。辞めて、資産の運用方法とかいろいろあるわけじゃないですか。それをしたらいいじゃないですかって言ったら、「お金がない」っていうんですよ。「借金したらいいじゃないですか」って言うと「借金の仕方がわからない」って言うんですよ。じゃあダメですよって話なんです。そこを抜け出すことを正解として持ってない人が多くて。


遠藤 俳優さんのスキルと、ビジネスのスキルって全然違うスキルじゃないですか。だから俳優さんの脳内のスパイラルで考えてると、そのスパイラルからは出ていけないみたいなところはあるかなーって。


谷川 までもそもそもビジネスが成り立つ段階っていうのが、お客さんから「谷川さん来てくださいよ」とかそういう相手側からのオファーがないと成り立たないとなると、自分から営業をかけていくっていうのは限界が来るんですよね。

遠藤 それは小劇場のお話ですよね。


谷川 そうですね。本当に集客について、考えてない人が多いなっていう感じがありますね。

遠藤 うーん、どうしたらいいんですかね、そこらへん。


谷川 例えば「演劇ごはん」みたいに、「演劇を見る」っていう観点と何かをつなげるっていう方向性を出していくか、あと、俳優が役職柄難しいのが、一人芝居じゃない限り、誰かがいないと演技ができないじゃないですか。そこがやっぱり難しいと思ってて、誰かの演出がいるんですよね。ってなると、個人で自分のビジネスを回せないってのがあるんですよ。例えばミュージシャンとかだったら路上ライブで一人でギター弾いたりとかができるんですけど。



遠藤 路上俳優さんってツイッターでいらしてフォローしてるんですけど、それなりに稼いでるんですよ。だから小劇場まわりの俳優さんより路上俳優さんが一人芝居してる方が、実はビジネスになってるっていう。

谷川 そうなんですそうなんです。それでそもそも、公演をやった時に俳優が人を呼んでくるっていう流れで、ノルマがあって、バックがあってっていうのは、あくまで(売上の)一部が(俳優に)入ってくる感じじゃないですか。それで、もともと取り分として取るのが演出家だとか、劇場の場代とかになるんで、どこまでも下請けの感覚から外れないんですよね。


遠藤 確かにスタッフさんとか演出家とか劇場代とかが優先になってきますよね。一番最後に余ったお金が俳優さんに回ってくるっていうシステムですね。

谷川 それじゃ稼げないよっていうのが全体的にあって。見せる場所をたぶん変えないと、一生稼げないなと思ってますね。あとは呼ぶお客さんも偏ってる気がして、見に来る方ってお芝居やってる俳優さんじゃないですか。


遠藤 ないお金を俳優さんが見にきて回しているっていう。

谷川 それもありますし、一般の業界人を取り込めてないってところが強いですよね。俳優が呼ぶ人は俳優じゃないですか。で、その先も俳優じゃないですか。どこまでいってもお金がない人がいっぱい集まってくるわけですよ。ってなると、例えば一般の友達から展開していくっていう方法を確立しないと、横に広がらないイメージはあるんですよね。


遠藤 そこのスタイルは抜け出さないと気づかないところがあって、僕も20代の頃とかは俳優さんとかに普通に告知してたんだけど、今はまずファンとか一般の人とかに告知のメールをばーって送るようになったんですよ。で、(集客が)大変そう、みたいな感じだと、俳優さんにも送ろうかなみたいな二段階目みたいになっていて。だからその一段階目をきちんと獲得して、そこを膨らませていかないといけなくて、それは「演劇ごはん」みたいなオープンなところで演出をして人と絡んだりとか、配信をして自分をアピールして好きになってくれた人に誘ってきてもらうとか、そういうパターンになってくるじゃないですか。だからずっと俳優さんだけにしか告知しないっていうスパイラルにいるっていう人はその自覚がまずあるかどうかっていう。

谷川 いやー、ない人は多いでしょうね。


遠藤 根深いですね。

谷川 根深いですね(笑)。




(つづきます)


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