インタビュー企画   

【インタビュー】谷川博昭さん:ビジネス視点で見る俳優のお仕事と業界について

大手企業の営業職の最下位から一気に数億売り上げる営業マンへと成長し、今は俳優や配信者として活動されている谷川さん。なぜ俳優に転身しようと思ったのか。そして、営業マンとして活躍されていた谷口さんから、演劇業界・俳優業界がどのように見えているのか伺います。(2019年3月取材)


左:遠藤隆之介さん、右:谷川博昭さん


<目次>


【第1回】俳優とマネタイズ。

【第2回】俳優として配信をしてみて思うこと。

【第3回】コミュ障だった時代の話とフリーランスについて。

【第4回】俳優にこだわらない。


<第3回>コミュ障だった時代の話とフリーランスについて。

遠藤 こんな話がいろいろできるっていうのも谷川さんがもともとは営業職、しかも営業成績最下位スタートだったそうで。

谷川 そうなんです。当時はセンサー系の会社に勤めてたんですけど、もともとそんなにコミュニケーション能力高い方じゃなくて。


遠藤 昔はコミュ障だったっていう。

谷川 そうなんですよ。話すのが苦手で、高校生の時まであまり人と話をしたくなかったんですよ。


遠藤 中高生時代の写真見せてもらったんですけど、コミュ障なのにパリピなんですよ。

谷川 パリピ風に見せてるコミュ障なんですよ。頑張ってる大学デビューみたいな感じです。話すのが本当苦手で、大学入るまで友達がいなかったんですよ。そもそも人嫌いってのがあったんですけど、話をするやつはいたけど心を開くわけでもなく、(人と)距離を取ってたんですよ。それで、社会人になったらコミュニケーション能力がいるかなと思って、みんなと話をしていくんですけど、10何年間まともにコミュニケーション取ってなかった人間が急に話とかできないんですよ。サークルとかいっぱい入ったんですけど、誰も僕のことを相手してくれなくって、その時に1年間くらいいろんな人から嫌われ倒すというか、LINEとかもブロックされたりとかして。2回生か3回生の時に、相手の話を聞いていくっていうのをやってったら、あ、これいけるなっていう感じになってきて。


遠藤 「スキル:傾聴」を身につけたみたいな。

谷川 そうですね。4回生の時に、学生ベンチャーとかに入って営業をしてたんですけど、その時にちょっといい数字が出たんですよ。日当とかで20万とか入ってきたりして。で、「俺できるんじゃねこれ」ってなって、会社に入ったんですけど、入ってみたら思った以上に話ができないというか。



遠藤 挫折がもう一回あったんですね。

谷川 そうなんですよ。


遠藤 なんで学生ベンチャーじゃなくて企業に入ったんですか?

谷川 やっぱり営業力がすさまじいって聞いていたんですよ。そもそも僕は高校生の時はアナウンサーになりたくて、狭い門って話聞くじゃないですか。狭い門を広くするためにどうしたらいいんだろうって考えた時に、友達から「医者とか研究者って、何すんのが大事だと思う?」って聞かれたんですよ。で、僕わからなくて、技術力とか研究力とかテーマじゃない?って答えたら、「営業力」が一番大事って言われたんですよ。


遠藤 全業種必要な能力なんですね。

谷川 で、なんで大事なのって聞いたら、例えばお金がないと研究員って研究ができないですと。どれだけ素晴らしい論文を書いても、それがすごいというものが認識されないとお金にならないし、次にいけないっていう。


遠藤 どんだけすごい演技をしても営業しなかったらもったいないってことですね。

谷川 そうなんです。っていうのを聞いて、じゃあ営業極めてから次に新しいことしようと。で、会社に入ったんですけど、半年間で全社で(営業成績)最下位になったんですよ。もうそこで結果が出なかったらクビだったくらいの状況で。で、そこで結構いい師匠に巡り会えたんですね。で、その人の話を聞いて、自分なりにやってったらノルマの5倍とか6倍の数字が出て、次の年に10倍くらいの数字を任されて、そこを3年間くらいずっと150%くらい伸ばしくらいな感じになったんです。


遠藤 楽しくなってきた感じですね。

谷川 そうですね。


遠藤 師匠は同じグループ会社の中にいらしたんですか?

谷川 はい。グループ内にいて、僕が辞めるタイミングで一緒に辞めちゃったんですけど、お前がいないならやめちゃうって言われて。


遠藤 師匠は今なにされてるんですか。

谷川 師匠は外資系の会社に行っちゃいましたね、引き抜きとかで。


遠藤 こっちは俳優なのに。

谷川 そうなんですよ。でもその師匠からは会社のオファーをいただいたりはしてて。


遠藤 すごいですね。カフェで朗読している人とは思えない振り幅ですね。でもそんな世界から来て、よく小劇場に絶望しないもんですね。

谷川 表現の世界にいる人のすごさっていうのは理解できてない部分があるんで、そこは勉強しがいがあるかなと思って見てるんです。


遠藤 もっと高いレベルの俳優さんたちと鍔迫り合いとしたいみたいな感じですよね。

谷川 そうですね。


浅海 でもそういう方たちって、あんまビジネスとして持っていこうという人はいないかもしれないですね。

遠藤 まぁビジネスと捉えることが悪って思ってる人もいますし。


浅海 ですし、さっきの話にもありましたけど、自分一人では回せない部分があるので、劇団とかに入っていない限り、自分でビジネスとして回そうって思ってる人が少ないかもしれないですね。ビジネスがあるところに自分が参画していって、みたいな。

谷川 言い方あれですけど、ちょっと受け身ですよね。


遠藤 いつか白馬の王子が来てくれて、すごいステージに連れてってくれる願望に近い感じですよね。でも本当にそんなことないじゃないですか。

谷川 ないですね。絶対にないですね。


遠藤 浅海さんは両方やっていてどうですか?小劇場界にもいつつ、ビジネス業界にもいるじゃないですか。だからこそ見えてるものとかあるんですかね。

浅海 僕は(劇団を)表現の場として持ってはいて、演劇にビジネスの場があれば、そこは狙いたいなと思ってるんですけど、いちおう家族もいてっていうスタンスなので、演劇でビジネスを回していこうとは思ってなくて、単純に表現だったりとか、自分が何か手伝うことで、作品だったりコメディだったりの力になればいいなっていう、どちらかというとボランティア精神で携わってる部分が大きいのかなって思いますね。


谷川 稼げなくてもいいんですけど、バイトせずにやっていける範囲までは収入としては取らないと難しいですよね。

遠藤 そこは配信とか、芸能系のお仕事で稼げればって感じですよね。


谷川 そうですね。まぁそこは難しいところなんでしょうけど。

遠藤 難しいでしょうね。特に俳優さんは希望者数が多いから、スタッフさんに比べてレアリティが俄然低いんですよね。



谷川 なんか見てて思うのはあれですね。プライドのある人の方が数字持ってないような気がしています。

遠藤 プライド!


谷川 僕も結構高い方ですけど(苦笑)、結果に関してプライドを持っちゃう人っているじゃないですか。この仕事を受けたくないとか。例えば、モデルとかの案件って相手が年上の方が多いらしくて、だから目線がエロいんじゃないかとかで断ってるみたいな話を聞くんですけど、受けたらいいのにって思うんですよね。

遠藤 まぁもちろん本当に危険なやつとかもあるかもしれないですけど。


谷川 そういうところで変にプライド持ってる人が多いなとかは思ったりします。

遠藤 本当に大きい案件が来た時に、案件を受ければいいのに、プライドが邪魔してみたいなことですよね。ビジネスになりそうな案件が来たのに、馴染みの小劇場で主役頼まれちゃって、ってそっちの方に出そうな人が多い気がする。


谷川 そうかもしれないですね。まぁ優先順位はあると思うんですけど、そこをすげ変えてる人が多いですよね。自分がこういう男になりたいんだっていうビジョンが薄いというか、

遠藤 最近劇団の会議とかでは、俳優業だけでずっと食べていきたいっていう目標ですか、あなたは制作業での収入もあるから、受付の制作と俳優で、副業みたいな感じにしていきたい感じですか、社会人ですか、とかはちょっと面接みたいなことはしてるんですよね。どういうビジョンでいきたいのかってがそれぞれあるじゃないですか。


浅海 そんなのやってる劇団ないですよ(笑)。

遠藤 オーディションもそれに合わせて推薦してますし。


浅海 そういう風にしないといけないけど、やってるところあんまりないと思います。

遠藤 よくないですよね。


浅海 僕が思うに、それは遠藤さんが「作(脚本)」をやってないからだと思います。普通、作・演出が主宰をやっていて、作りたいものがあるから、作りたいものを表現するっていうのがなくならない限り、多少の赤字だろうが、どんどん作ることにインセンティブがある気がします。

遠藤 確かに「絶え間なき作の欲求」って自分はないんですよ。預けられた脚本の出来が良かろうが悪かろうが、最大限かわいがって最大限その脚本がちょっとつまんなかったらまぁまぁ面白くしてあげて、面白かったらめっちゃ面白くしてあげるのが仕事って思ってるから。


浅海 その作家の作品を表現したいって劇団員が多いので、だからファルスシアターっていうのはそういう意味で少し特殊な劇団かもしれないですよね。だからそういう話もできるのかもしれないですね。

遠藤 確かにあの人が描く、あの面白いものを世に広めたいってスタンスの人が多いですよね。

谷川 なるほど。


遠藤 そう考えるとフリーランスの人は、本来自分をアピールしないといけないし、毎日SNSを更新して、ガンガンお客さんと人脈を作っていかないといけないはずなのに、劇団員の仕事もしなくていいから、目の前の演技だけしてればいいや、って40~50代になってもアルバイトをしてるっていう、パターンは悲しいですよね。


谷川 最近思うんですけど、"フリーランス"って言葉に酔ってる気がするんですよね。"自営業無職"じゃなくて、"フリーランス"。無職って立ち位置から這い上がっていく姿勢の方がたぶんいろんな人から共感を得られる気がすると思っていて。

遠藤 谷川さんはプライドの高い感じと、時折見せるマウンティング感はありますけど(笑)、ちゃんと自分で俯瞰でわかってるっていうのがすごいですよね。僕も自分の虚栄心とか、なんだかんだ穏やかなキャラだけど、マウンティング取りたくなっちゃう病はあるんですよ。それを自分でわかってコントロールしていくって大事じゃないかなって思うんですよ。


谷川 そうですね。そこもブランディングの一種なんですよね。ある種の。

遠藤 この話面白いけど、果たして読んだ俳優さんたちが食いつくのかな。ムカつくなで終わっちゃわないかな。心配になりますよね。でも気付いて欲しいことはあるんですけどね。


谷川 そうですね。謙虚であるというよりは、どう自分をブランディングしていくかっていうところが大事なんで、そのためには自信を見せることも大事ですし、見せ方を理解しないといけないですよね。

遠藤 僕は会長とかやって初めて、ラジオ呼ばれたり、普段じゃ呼ばれないようなところ行ってトークしたり、いろんな演出家さんと交流して、いろんな劇団とか見て今も対談させてもらったことで自分の器も広がるからやっぱり、やったもん勝ちみたいなところはあるし、なんかあるところまでいくと、なんか「あ、ポケモンと同じで成長させる楽しみを見つけられるのに」って。


谷川 そうなんです。できたら僕はブランディング的には控えめな方にはしたいんですけど、初めはそこじゃダメなんですよね。後追いなんで。ちょっと派手目にしとかないと「こいつなんだろう」って思ってくれないと思ってるんです。




(つづきます)


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